
定住に向けた基盤づくり
隊員
五戸 隆重さん
掲載日
2026年5月21日
ごあいさつ -「定住に向けてのこれから」
「寒い中、足を運んでいただき、多くの皆さまの前で発表できることを大変うれしく思っています。」熊本市西区河内・芳野校区の地域おこし協力隊として活動する五戸さんは、活動報告会で「定住に向けてのこれから」というテーマで、今年度の取り組みと定住を見据えた自身の考えをまとめ、五戸さんの言葉で「これから」を説明する発表となりました。
結論- 「今後も河内に住み続けます」
発表の早い段階で、五戸さんは結論を明確に伝えます。「私は、今後も河内に住み続けます。皆さまのご支援とご協力をいただいたおかげで、なんとか定住の目処が立ちました。」着任から2年以上が経ち、地域の方から「仕事は見つかったか」「定住はするのか」と声をかけられることも増えた中で、自身の意思として定住の方向性が固まりつつあることを共有しました。

協力隊制度と、定住の現実 -「熱い思いだけではどうにもならない」
協力隊は地域での活動を行いながら、3年をかけて定住を目指す制度ですが、定住は必ずしも強制ではありません。また、定住率は全国的には高い数値が示される一方で、地域差があり、受入体制や仕事の選択肢によって結果が大きく変わります。
そのうえで、定住できない最大の理由として「安定した収入の確保」。「生活が成り立たなければ地域に残ることはできません。熱い思いだけでは乗り越えられない現実があります。」実際に自身も、活動費・生活費・収入のバランスが見えず、活動の継続を諦めかけた時期があったことを率直に語りました。
視点の転換 -「3年ではなく、10年15年で考える」
悩んだ末に、五戸さんは考え方を切り替えるようになります。「地域内だけで生活を成り立たせるのは、3年では無理だ。」そう感じたことで、協力隊の3年間を“ゴール”ではなく“基盤づくりの期間”として捉え直し、「定住してから10年、15年かけて何をしていくかが 大事ではないか」と考えるようになったといいます。
自分の武器は「器用さ」だとも語り、休日にアルバイトを探して経験を積みました。阿蘇や黒川、大分方面、八代方面まで足を運んだこともあり、収入面では思った成果は得られなかったが「経験と自信を深める大切な時間だった」と振り返りました。

仕事の見通し -民泊の清掃・管理を軸に、河内で暮らす
副業をするなかで出会ったのが、河内で民泊を運営する企業でした。現在は当該企業の民泊業務に従事しており、企業が市内に複数の民泊拠点を有することから、他拠点の業務にも携わっているとのことです。
今後、民泊事業は熊本県内の他地域へも広がる予定で、五戸さんは今後も民泊の管理業務に携わっていきたいと話しました。電気や設備管理の経験もあることから、来年度はこの分野への就職を目指し、民泊を中心とした仕事を続けていく考えです。
民泊の仕事を続ける理由として、①地域内で仕事ができること、②技術を生かした安定収入につながること、③“顔が見える立場”になることで地域の声を企業に直接伝えられること、の3点を挙げました。これは地域にとっても企業にとってもメリットで、さらに、県内各地の民泊支援への広がりや、他地域の協力隊への仕事の発展・紹介なども語り、「河内だけでなく熊本県全域を盛り上げたい」という思いも述べました。

今年度の活動 - 派手さより「継続できること」
今年度は「一度きりで終わるものではなく、継続できるもの」を意識して活動したと話され、主に3つの活動を紹介しました。
①活動拠点の整備(整備中)
河内には温泉地区があり、そこに拠点を借り、現在整備を進めています。「全部自分でやる」ことを意識され、未経験の作業もYouTube等で学びながら進めているとのこと。今後は地域の方との交流の場づくりやワークショップ開催などに活用し、退任後も事務所兼住居として続けていく予定。
②竹灯籠づくりの継続と、新しい挑戦
竹灯籠の製作を継続し、展示やワークショップにもつなげました。また、新しい取り組みとして、竹は割れやすいという課題を踏まえ、「竹以外の素材を使った割れない灯籠」の試作にも取り組んでいると紹介。
③各種ワークショップの開催
イベントでのワークショップブース出展を行い、今後も複数回の実施を予定。ネイチャーゲームや防災をテーマにしたクラフトワークショップなどを挙げ、「小さな子どもたちも楽しめること」を意識して企画しています。
一方で、「地味だなと思わ れた方もいるかもしれません」と正直に触れ、「本当はテレビで紹介されるような派手な実績が欲しい」という本音も語っています。しかし現時点では、信用・時間・資金が十分ではなく、大きな実績を急ぐと中途半端になってしまうため、時間をかけて実現させていく考えを伝えられました。

感謝とこれから -「暮らし、働き、関係を積み重ねます」
「3年は定住の基盤づくり。10年をかけて地域に根ざした仕事をつくる。15年をかけて地域に恩返しをしていく。」
将来的には小規模な起業も視野に入れており、空き家の見回りや草刈りなど、地域課題に寄り添う事業を目指したいと話されました。起業は大きく広げるというより、まずは「定住の基盤を安定させるためのもの」という位置づけで語られた点が特徴です。
最後に五戸さんは、地域の人間として認めてもらうには「まだまだ足りないところがある」としつつ、「それでも、暮らし、働き、関係を積み重ねます。」「協力隊の任期はあと少しで終了ですが、今後とも地域の人間として生きていきたいと思っています。」
これまでの支援への感謝と、河内で暮らし続ける意志を伝えて発表を締めくくりました。

取材・文/くまもと地域おこし協力隊ネットワーク
※記載の内容は取材時(2026年1月22日)のものです。
※本記事は、「令和7年度 熊本市西区河内・芳野校区地域おこし協力隊 活動報告会」(2026年1月22日/河内公民館多目的ホール)での発表内容をもとに編集しています。
熊本市西区河内・芳野校区地域おこし協力隊
五戸 隆重(ごのへ たかしげ)
出身:青森県
着任:2023年10月
所属:熊本市西区役所河内まちづくりセンター
任用形態:委嘱
活動ミッション: 空き家活用、竹林活用、地域課題発掘

