
御船町・浅の薮地区の、いいところ探し
隊員名
杉野 結加里さん
日時
2026/02/16
鳥の声で迎える朝と、虫の音に心をすませる夜
「なんてステキな場所なんだろう」。
生い茂る山、こんこんと湧く水。鳥の鳴き声で朝を迎え、夜はしんとした森の気配に包まれつつ、虫の音に耳を傾ける。数年前、当時御船町の地域おこし協力隊だった友人に誘われて訪れた町の中山間地、浅の薮(あさのやぶ)地区。その雰囲気に、杉野結加里さんはすっかり魅せられてしまいました。
杉野さんの気持ちを揺さぶったのは、何も自然の美しさだけではありません。「地元の人たちの食事会に参加させてもらったりしていました。こんなにステキな人たちがいるなんて」。
そんな折、まさにその浅の薮地区を中心として農事組合法人さこんたろうが設立。地域おこし協力隊を募集するというではありませんか。
杉野さんは一も二もなく応募し、協力隊として浅の薮地区にやって来ます。
地域の人と一緒に畑に立つ
業務のメインとなるのは農作業のサポート。杉野さんには家庭菜園の経験がありましたが、いざ農業となると「規模、技術、かける労力や愛情が全然違った」と話します。
業務には、耕作放棄地を再び農地として活用する取り組みも含まれます。放棄地となって時間が経ってしまった場所や、あまりにも山奥にある場所は、なかなか手を出せません。それでも、「あんたが言うなら、一緒にやろうか」と言ってくれる人たちと同じ目線で、共に畑に立ってきました。
自ら携わることで、農業を取り巻く厳しさや、それらを跳ねのけて畑に立つ農家の思いにも触れることとなった杉野さん。「わたしは農家ではありません。でもこうして一緒にやるからこそ、分かち合えるものや達成感がありました」。
とりわけ驚いたのは、規格外だからという理由で廃棄される作物の多いこと。「たとえば、子ども食堂に卸すとか。少しでも“もったいない”を解消できる道がないか、考えたいです」。


まずは自分たちの手で。「浅の薮レンジャー」の逞しさ
杉野さんは、所属先の農事組合法人さこんたろうのメンバーをはじめとする地域の人たちを、「浅の薮レンジャー」と呼び慕っています。農業だけでなく、料理、林業、建築、水道、土木などなど、とにかく多くのことを自分たちの手でサラリとこなしてしまうのだそうです。
「生活のために、苦労して技術を身につけたんだ、と話してくれました。本当にすごいです!」と、杉野さんは彼らへの称賛を惜しみません。
自分たちの暮らす地域のことは、まずは自分たちでやる。こうした気風が醸成されているからこそ、杉野さんは地域おこし協力隊として次なる一歩に向けたサポートについて考えることができます。「協力隊がなにかしてくれる」と思われていては、こうはいきません。
最近では、浅の薮地区に湧水公園を造る構想が持ち上がっています。湧水や自然と親しみながら、規格外野菜を使った手料理を食べられるカフェで寛いだり、ツリーハウスからの眺めを楽しんだりできる、地域のシンボルのような場所を生み出せたなら。近隣地域との連携を含め、実現の方向を模索中なのだそうです。

いいところ探しと、学ばせてもらう姿勢
地域おこし協力隊が陥りが ちなことのひとつは、「ダメ出し」から始めてしまうこと。「このままではダメ」「効率が悪い」「なんでこんなこと」…と、とにかく現状を否定してしまうのです。地域をもっとよくしたい、と気負ってのことなのでしょうが、いきなりやって来た人にそんなことを言われて、地域の人にとっては気持ちのいいはずがありません。
その点、杉野さんは「いいところ探し」を信条としています。浅の薮地区や地域の人への尊敬の念は、前述のとおり。区役である清掃活動にも積極的に参加しています。「浅の薮の人たちがこの地域をどれほど大切に思っているか、きれいに保とうと心を配っているかも実感としてわかるから」。それが、地域のために自分にできることは何か、と考える原動力にもなっているようです。
地域の人たちの素朴な優しさを、それこそが本質的な浅の薮地区の魅力だということを、誰よりも深い部分で知っている杉野さん。
「ここに暮らし活動できることが、すごく幸せ」。
そう言って、穏やかに笑っていました。
御船町の紹介
九州・熊本県のほぼ真ん中に位置し、「恐竜の郷」としても有名。「ちょうどいい田舎」のキャッチコピーのとおり、空港や熊本市街地へのアクセス良好ながら町の7割が中山間地で、吉無田高原など自然の豊かさに触れられる点も魅力です。浅の薮地区は、吉無田高原の中に位置しています。
御船町の地域おこし協力隊は、町内の団体等の希望を受け、町役場が窓口となって隊員を募集(業務委託)しています。

