
地域の思いに寄り添った、空き家活用のかたち
隊員名
尹 美恵さん
日時
2025/11/13
空き家問題のポジティブな一面
全国的に空き家問題が深刻化している背景もあいまって、空き家に関わる地域おこし協力隊は多くなっています。空き家バンクの運営にはじまり、移住促進と絡めた展開や店舗利用の促進、ふるさと納税の返礼品に「空き家の管理」を選べるユニークなものまで、各自治体はあの手この手で課題に挑んでいます。
御船町地域おこし協力隊の尹美恵さんが取り組むのは、DIYと融合させた空き家の利活用です。
熊本の田舎暮らし歴、約15年の尹さんですが、家やDIYに関する技術は持ち合わせていません。でも、人脈はありました。以前球磨地方に住んでいたころの知り合いに、環境に配慮した伝統工法の大工がいたのです。そこで尹さんが企画したのが、その大工を講師に、古民家をDIYするワークショップ。技術を教わるだけでなく、昔ながらの家の造りを学べる内容となっています。国内の産業廃棄物の多くを建築廃材が占めていることを鑑みた、環境配慮型のワークショップであることもポイントです。
ワークショップの会場をのぞいてみれば、子どもから大人まで金槌やノコギリを手に、あっちでトントン、こっちでギコギコ。100年以上前に作られたと思われる土壁を前に、参加者一同興味津々。立派な材から抜いた釘を指さしながら「これはまだ使えるからね」と話す大工の無骨な指先を、子どもたちは食い入るように見ていました。
「家のDIYは、暮らしに直結する技術。『できた!』と喜んでいる参加者を見るとうれしいです」と、声を弾ませる尹さん。どちらかといえばネガティブな点がクローズアップされることの多い空き家の話題ですが、やり方次第でこんなにもポジティブな場にできるのだと、感心してしまいます。
空き家に関わったこと で、尹さんはあることに気づいたといいます。それは、地域や人によって家に対する考え方に違いがあること。尹さん自身は引っ越しの多い家庭で育ったこともあり、「家は代々の家族や親族が暮らす、守るべきもの」という考え方に馴染がありません。「気づかないうちに傷つけてしまうようなことがないよう、地域の人たちの思いをリスペクトしたい」と真摯に語ります。
ずっと守ってきた家や土地。手放さなければならないのなら大切にしてくれる人に渡したいというのが所有者の本音。そうした視点においても、新しく家主となった人の暮らしや人柄に触れることができるDIYワークショップの意義は大きいと感じました。






熊本での暮らしに見る、心地よさ
神奈川県出身の尹さんは、御船町の地域おこし協力隊になる以前にも熊本で暮らしていました。移住のきっかけのひとつは、東日本大震災。あたりまえの日常が、決してあたりまえではなかったことを、多くの人が痛感したあの年。漠然とした不安が募るなか、尹さんの気持ちが向かった先は九州でした。「宮崎県にいる友人のもとに遊びに行ったことがあって、なんか、九州っていいなぁ…って思ってたんです。のんびりしていて、自然が豊かで」。
そうして行きついた熊本県球磨地方に住むこと、10数年。家庭の都合で1年ほど神奈川県に戻るも、2024年に再び熊本へ。そのタイミングで御船町の地域おこし協力隊に着任します。
思いがけない寒さや水害を経験してなお熊本を選んだのは、子育て環境のよさを感じていたから。「都会に比べて寛容でのびのびしているところが、わたしにとっては一番の魅力」。そう話す尹さんは現在、小学生と中学生の子ども2人と御船町の中山間地の上野地区で暮らしています。区役に参加したり、地域の祭りに誘ってもらったり、少しずつ地域の一員となりつつあるようです。




