
いまここ”にエネルギーをかけるから、未来が広がる
隊員名
工藤 夏樹さん
日時
2025/11/13
ほんとうに大切にしたいものは何か?
「わたしは実験台なんですよ」。そう言って、工藤夏樹さんはニヤリと笑います。
工藤さんが関東からの移住と地域おこし協力隊着任を決意した背景にはさまざまな要素があるのですが、突き詰めると「ライフスタイルの可能性を模索したい」というところに集約されそうです。工藤さんのもうひとつの顔は、ファイナンシャルプランナー。「お金」を取り巻くさまざまな人生に関わってきたからこそわかったことがあります。
「お金がたくさんあることが幸せなんじゃない。ただ、ゼロになってしまったら夢も希望も抱けません。お金の得(え)方と使い方、つまりどんな生き方をしたいのか、どんな時間の使い方をしたいのかが肝心なんです」。

また、都会暮らしの中で抱いてきた違和感もありました。「他人からどう思われるかを気にしすぎているところもあるのかも。そういう余計なものは、地方のほうが捨てやすいんじゃないでしょうか」。
目指したい生き方。ほんとうに大切にしたいもの。
いまの工藤さんにとってのそれは、「人生において大切なことを、周りの人に伝えること」であり「ありのままの自分で信頼関係を築くこと」。
だからこその移住と転職。「こんな生き方もあるんだよって、見せ られたらいいなと思ったんです。わたしは、実験台ってことで(笑) まずは自分自身の生き様を見てもらわないと、それこそ信頼してもらえないですから」。


信頼関係を築きながら地域に“入る”
工藤さんが関東から熊本県御船町に移住したのは、2025年夏のこと。取材は地域おこし協力隊着任からわずか1ヵ月の頃で、工藤さんはイベントの協賛広告集めに奔走中でした。まだよく知らない地域での広告営業にもかかわらず、「あいさつ回りも兼ねて、地域のお店を訪問するのは楽しいです! 地域おこし協力隊の1年目は、地域に認めてもらうことが目標ですから」とはつらつとした様子。持ち前の明るさと長年の営業職で培ったコミュニケーション力が、いかんなく発揮されています。


少しずつ、地域に“入る”感覚もつかんできました。地域おこし協力隊の活動を通して、町のイベントを盛り上げるサポートができ、子どもたちの楽しそうな姿を見られる。初めて目にした精霊流しの行事に感動し、その行事を取り仕切る地域の人たちの苦労に触れ、現在に至るまで続けられてきたことの意味を考える。それらは、地域に“入って”こそ得られる学びです。「誰のために仕事をしているのかが、くっきり見える。そこに自分の気持ちがまっすぐ向かう。それが幸せ」。

朝、鳥の声で目を覚まし、「今日はどんな出会いがあるだろう」とワクワクしながら家を出て、出会いと発見と学びを抱えて帰宅し、「あしたはどんな一日になるだろう」と期待に胸をふくらませて眠りにつく。そんな暮らしのなかで、「自分の未来が広がっていくような感覚がする」のだと話してくれた工藤さん。そのまなざしには、純粋な少年と、懐深い大人がバランスよく内包されているような印象を受けました。

御船町の紹介
九州・熊本県のほぼ真ん中に位置し、「恐竜の郷」としても有名。「ちょうどいい田舎」のキャッチコピーのとおり、空港や熊本市街地へのアクセス良好ながら町の7割が中山間地で、吉無田高原など自然の豊かさに触れられる点も魅力です。
御船町の地域おこし協力隊は、町内の団体等の希望を受け、町役場が窓口となって隊員を募集(業務委託)しています。

取材・文/家入明日美(編集室たんぽぽ)
記載の内容は取材時(2025年9月)のものです
御船町地域おこし協力隊
工藤 夏樹

出身 神奈川県川崎市
任期 2025年8月~2028年7月
活動テーマ 吉無田地域を中心に、トレイル整備や自転車を活用した地域活性化を行う。
略歴:
食品スーパー、金融、生命保険代理店などで営業として働いてきました。運動も好きで、趣味のひとつはマウンテンバイクです。見栄や他人からの評価などの「余計なもの」をそぎ落とし、自分自身という素材で勝負する。そのフロントランナーになるつもりで、御船町での人生をスタートさせました!
